キャンプの火起こしはとにかく早くそして楽に済ませたいと思っている人も多いと思います。
ひと昔前までは汗だくになりながらうちわや新聞紙をパタパタして火を起こしていましたが、最近は「火吹き棒/ファイアーブラスター」を使ったスマートな着火方法が注目されています。
火吹き棒/ファイアーブラスターを使った場合、実際どのようなメリットが得られるかをご紹介いたします。
- 狙ったところをピンポイントで風を送ることができるため種火を一気に炎に変えることができる
- 火元から離れたところから風を送れるため熱や灰の影響を受けにくい
- おしゃれなため満足感を得られる
新たな着火方法として注目されているため各社様々な火吹き棒が販売されていますが、ぶっちゃけ「単なる細い金属のパイプ」です。
ということで100均の「自撮り棒」、その中でも最も安いセリアの100円自撮り棒を使って火吹き棒のつくり方を技術者目線で詳しくご説明いたします。
火吹き棒(ファイアーブラスター)を自作する本当の理由
Amazonで火吹き棒/ファイアーブラスターを検索すると、大きく3つのタイプに分類された商品がヒットします。
それぞれのメリットデメリットを表にまとめてみました。
出典:Amazon
メリット | デメリット | |
①伸縮可能、単なるパイプのタイプ | 1.とにかく安い(1,000円以下) 2.最もコンパクトに収納できる(約15cm) | 1.味気ないデザイン 2.吹き口と持ち手が金属のため抵抗感を感じる |
②伸縮できない、木製アクセントがついているタイプ | 1.吹き口、持ち手が木製のため触感がいい 2.自然になじむおしゃれなデザイン | 1.持ち運びにかさばる 2.そこそこお値段が張る(数千円程度) |
③伸縮可能、木製アクセントがついているタイプ | 1.吹き口、持ち手が木製のため触感がいい 2.自然になじむおしゃれなデザイン 3.比較的コンパクトに収納できる(30cm以下) | とにかく高い(5,000円以上) |
この表からわかるように、それぞれがお互いのデメリットをメリットで補った仕様になっています。言い方を変えると、「すべてのメリットを備えた商品はない」ということです。
つまり、表の赤字で示したメリットをすべて満たした火吹き棒が欲しい!これが火吹き棒を自作する本当の理由になります。
素材に「自撮り棒」が最適な理由
火吹き棒を自作している人の多くは、以下3つの素材をベースにしています。
- 金属のパイプ
- 指示棒
- 自撮り棒
先ほどお伝えした通り、収納性を考慮すると必然的に①は選択肢から消えることになります。②と③で迷いましたが、ある程度太さがあることで壊れにくいこと、より長く伸ばせることから③自撮り棒を選択しました。
金属のパイプは穴の直径が常に一定なのに対して、伸縮性のパイプは口元から火元に向かって徐々に直径が小さくなっています。
一般的に、太い方から細い方に向かうにつれて風の速度が速くなる法則(ベルヌーイの定理)があるため、口元と火元の直径の差が大きい「③自撮り棒」を火吹き棒の素材として使用するのは理にかなっているといえます。
セリア「自撮り棒」を使った火吹き棒(ファイアーブラスター)の下準備
必要なもの
- 自撮り棒(100円) ←Seria商品
- 木管/5WH(348円) ←コーナン商品
木管はホームセンターで購入できます。私はコーナンで購入しました。
木管は外径φ24mm(内径φ13mm)×長さ200mmです。
どこの売り場に売ってるの?
自撮り棒はスマホを取り付けて自分撮りを行うスマホ用アクセサリーのため、スマホ関連グッズ売り場にあります。
木管は木材コーナーにあります。見つからないときは店員さんに「200mmくらいの木管ありますか?」と尋ねてみてください。
セリア「自撮り棒」を使った火吹き棒(ファイアーブラスター)のつくり方
パイプ部分の取り出し
1.白いホルダーを外す
スマホが取り付く白いホルダーがパイプにカシメられて付いています。両手で持って何度かひねりながら引き抜くと結構簡単に取り外すことができます。
2.グリップを外す
グリップのクッションは端からクルクル巻き取るようにすると簡単に外すことができます。
3.エンドキャップとリモコンコードを取り外す
後ろに黒いキャップが嵌っているためこれを外します。マイナスドライバーの先端を隙間に引っ掛けると外しやすいです。
リモコンスイッチのコードがセロハンテープで固定されているためセロハンテープを外すと簡単にコードを取り外すことができます。
ここまでおよそ5分!単なる金属パイプの状態になりました。重さはたったの33gです。
木製部分の作製
1.木管を半分に切断
長さ20cmの木管をのこぎりを使って半分に切断します。1本は吹き口となるパーツ、もう1本は持ち手となるパーツです。
今回使用したのこぎりはセリアで購入可能な「カッターのこぎり」です。のこぎりの歯がカッターのように収納できるためコンパクトで安全に使うことができます。歯の厚みが若干薄いですが今回のような小物であれば問題なく切断することができました。
2.紙やすりで切断面を整える
切断面は凸凹でトゲトゲの状態になります。比較的粗めの紙やすり(今回は#120を使用)を使って端面をきれいに整えましょう。
穴の内側にもささくれが残っているので、紙やすりを丸めてささくれを除去しましょう。
3.エッジを丸める(2本とも)
この工程は最後に行っても構いませんが、エッジを丸めることで口当たりを和らげることができます。
奥にあるのがそのままの状態、手前にあるのがエッジを丸めたものになります。吹き口以外のエッジも丸めることで見た目がやさしい印象になるので4か所すべて作業します。
4.木管の内径を拡大する(吹き口となるパーツのみ)
この作業が結構大変です。できるだけ楽な方法をご紹介するので頑張ってついてきてください。頑張った分仕上がり後の満足感は高くなります。
先ほど加工した木管を吹き口に連結させたいのですが、自撮り棒の外径がφ16.0mmに対して、木管の内径がφ13.0mmのため、このままだと自撮り棒に木管を取り付けることはできません。
このため木管を一部削って穴を3.0mm拡大する必要があります。3.0mmといってもわからないので、自撮り棒を木管に入れたときに少しきついと感じるまで確認しながら削っていきます。削りすぎてしまうとぐらついてしまうので徐々に削っていきましょう。
ちなみに深さ方向は1cm程度削ればぐらつきなく安定します。
ヤスリ棒を使って手で少しずつ削っていくととにかく時間がかかって大変なので、ここは電動工具に頼る方が賢明です。
私はこのように③電動ドライバーのビットに紙やすりを巻き付けて作業を行いました。
ちなみにその他のおすすめの電動工具は以下の通りです。
②が一番早く作業を終えられると思います。
- ルーター(リューターとも言う) ※DAISOでも購入することが可能です
- 電動ドライバー+砥石
- 電動ドライバー+紙やすりを巻き付け ★今回使用した方法★
出典:DAISO
内径がφ16.0mmの木管があれば面倒な加工はしなくてすむのでは?そのとおりです。今回ご紹介したものより一回り大きい4WH/外形φ30mm(内径φ16mm)×長さ200mmというものがあります。これを使えば内径を削る作業は必要ありません。ただし内径が大きいということは外形も太くなります。取り付けてみたところ少し太すぎるので今回のものと比べて不格好な印象を受けます。そんなの気にしないよという方はこちらをお使いください。
5.木管の表面を紙やすりで研磨
木管の表面を紙やすり(#400程度)で整えたら木管の作業は終了です。お疲れさまでした。
合体作業
1.木管と火吹き棒を合体
ここまで来たらお待ちかねの合体作業です。ワクワクしますね!
とはいえ金属パイプと木管を固定する前にまずは仮組を行います。
仮組の方法は、吹き口の木管は太い方から挿入し、持ち手の木管は細い方から挿入します。
木管が思い通りの位置に来ていることが確認できれば、木管側に接着剤を塗布して固定します。塗りすぎると後でふき取り作業が大変になるので少な目で構いません。
接着剤は「金属と木がくっつく接着剤」を使用してください。
2.仕上がり確認
セリアの100円自撮り棒で作った火吹き棒の長さを確認します。
使用状態・・・全長54.0cm
収納状態・・・全長29.5cm
長さ調整ができる伸縮性の自撮り棒をベースに製作しているため、使い勝手がいい火吹き棒に仕上がりました。
縮めれば30cm以下になるため収納ボックスに収まるサイズです。
カスタムしてみました(2021.2.20更新)
1.先端にストッパーを付けました
先端にストッパーが付いていないため誤って押し切ってしまうと先端が埋まり二度と引っ張り出すことができません。こうなると短い状態のまま使わざる負えなくなってしまいます。こうならないためには先端にストッパーをつける必要があります。
色々悩んだ結果、今回はホームセンターで売っている「ホースニップル(8×1/8)」という部品を使ってみました。1個100円ちょっとで購入できます。
このままではパイプの断面がハート形をしているため入りません。口元をグリグリしてできるだけまるくなるように広げましょう。
あとはパイプ先端にホースニップルをいれて金づちで押し込めば完成です。
2.アンティーク風仕上げ(2021.2.20更新)
木は素材そのままでも十分雰囲気があります。一方で、汚れがつきやすかったり水分によってカビが発生しやすかったりするため木を保護する処理を行うことをおすすめします。
焚火シーンに使う道具ということで、少し濃いめのウォルナット色のニッペ「VINTAGE WAX」を使用しました。布に少量つけるだけで伸びがよくとても塗りやすいワックスです。
落ち着いた雰囲気で焚火シーンにとても似合う仕上がりになりました。
セリア「自撮り棒」を使った火吹き棒(ファイアーブラスター)のまとめ
いかがでしたでしょうか。途中少し大変な作業がありましたが、大変な作業を乗り越えたあとには必ずこの上ない達成感が得られます。普段の生活では決してやらないことでもなぜかキャンプになるとやりたくなる人も多いと思います。そんな方にはぜひ手作りの火吹き棒(ファイアーブラスター)でさらに豊かな焚火時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。
「囲炉裏」それは焚火を囲みながら会話と食事の質を高めてくれるキャンプに欠かせない道具です。季節を問わないため一年中活躍するキャンプ道具でもあります。なかでもハイランダーの囲炉裏はコスパ×大きさ×掃除のしやすさの3拍子がそろった文句の[…]
椅子(チェア)はキャンプで欠かせない道具の一つです。キャンプ初心者の方は「とりあえず椅子を買おう」という感じでどちらかというとお値段重視で選ぶ方も多いと思います。でも冷静に考えると、テントを含めてキャンプ中に過ごす時間が一番[…]
サイドテーブルとはキャンプチェアに座りながら手が届く範囲におつまみや飲み物を置いて楽しむための小さなテーブルのことを指します。「リビングテーブルがあればいいじゃん?」と思う方もいると思います。確かにリビングテーブルもキャンプ[…]